売上が下がったことを、私は「墜落」と捉えています。墜落したままでは、自分のプライドが許せません。引退だったらいいのですが、墜落したまま消えていくことは許せないのです。だからこそ、2年間現場に戻り、自分で自分を励ましたのです。
2期連続で赤字になった時は、本当に大きなダメージでした。口には出しませんでしたが、今までいろいろお金を使ったり、人を助けてきたのに、この扱いはなんだと悔しくてたまりませんでした。
「人って、こうも変わるんだ。なんだこいつら、絶対に許せない」とも思いましたが、それがパワーにもなりました。その後、煮え湯を飲まされたメーカーの商品を買ったことは一度もありません。
怒りの矛先を人に向けたくはないので、人と話をしたくないのです。かといって、家にこもっているのも嫌なので、朝3時や4時に起きて乗り合いの釣り船で釣りに行ったりしていました。とにかく人と話したくないという気持ちが強かったのです。
5000万円の支払いがあるのに入金は800万円。そんなことが何度もありました。「どうしますか」と聞かれるのですが、「どうすればいいのかオレが聞きたい」、そんな心境でした。
銀行で爆発したことありますが、もちろん相手にはしてくれません。問屋関係には頭を下げて待ってもらい、下請けや社員には迷惑をかけないようしてなんとか乗り切りました。
27年間仕事をしてきて地獄のような思いをしたのは、たった2年です。でも、この2年間のトンネル時代を忘れることはできません。
うまくいっている時は、お金がなくなるなんて考えられません。お金が勝手に貯まっていきます。しかし、お金がなくなり始めると、お金が貯まるという感覚もなくなり、どうやって貯めたのかわからなくなってしまいます。
お金が出ていくことが恐いので、先にもらわないと絶対に支払いはしないなど、自分なりのルールを徹底します。これを1年続けたことで、お金に関してきっちりした会社の体質が出来上がりました。そうなれば、しめたものです。避けられてばかりいたお金が戻ってくるのです。
あの時の恐さを忘れることは、今でもありません。